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歌番組から報道まで…ジャニーズ“独占”から見える日本社会

2018-05-04

「ジャニーズ」と聞いただけで、男性のなかには拒絶反応を起こすひともいるに違いない。私も男性なので、その気持ちが少しはわからないでもない。だがそんな人も、ぜひジャニーズに注目してみてほしい。

 いまや世はアイドル全盛だ。女性アイドルではAKBグループがいて、ももいろクローバーZもいる。最近はそこに乃木坂46や欅坂46といった新興勢力も台頭してきた。

 ところが、男性アイドルは長年にわたってジャニーズのほぼ独占状態が続いている。テレビを見ても歌番組はおろか報道番組にまでジャニーズのアイドルが出ている。考えてみれば不思議な話である。いったい、なぜなのか。

 そのキーパーソンはやはり、ジャニーズ事務所創設者であり、現在もプロデューサー・演出家として辣腕を振るうジャニー喜多川(86)だろう。

 アメリカで生まれた彼は、終戦間際の日本で空襲に遭い、九死に一生の体験をした。戦後は米軍に勤務して朝鮮戦争に赴いた。そして帰国後、在日米軍宿舎・ワシントンハイツで少年野球チームを結成し、それが現在のジャニーズのもとになった。1960年代前半のことである。

 野球は、誰もが自分の個性に合ったポジションを見つけて参加できるスポーツであり、戦後日本がお手本にしたアメリカ流の民主主義の象徴でもある。だからそこからスタートしたジャニーズは、ある意味、日本の戦後そのものなのだ。

 だがそれから半世紀以上が過ぎ、ジャニーズもいま大きな変化の時を迎えている。

 まずご存じのようにSMAPの解散があった。その後もタッキー&翼の活動休止があり、つい先日は渋谷すばるの関ジャニ∞からの脱退発表があった。さらにTOKIOの山口達也(46)の女子高生強制わいせつ容疑という前代未聞の不祥事が明らかになった。

 そしてそのなかで、ジャニーズ事務所も“ネット解禁”によって新たなメディア戦略に踏み出そうとしている。

 これまでジャニーズのタレントはネットでの写真掲載はNGだった。それが今年になって一部制限はあるもののOKになった。それだけではない。3月からはユーチューブでジャニーズJrのメンバーがオリジナル動画をアップするようになった。まだデビュー前の5つの若手ユニットが視聴回数を競い合う仕組みだ。海外市場を視野に入れたこうしたネット進出の流れは、今後さらに加速するだろう。

■前例のない40代、50代アイドル道

 もう一方で、嵐など既存のグループも健在だ。ただ、岡田准一、森田剛と相次いで結婚し、メンバー6人中4人が既婚者となったV6のように、かつての「若い独身男性」というアイドルのイメージからはますます離れつつある。ここから前例のない40代、50代アイドルの道をどう切り開いていくことになるのか、それは未知数だ。

 そうしたなか、ジャニーズの全タレントに英語を覚えるよう指令を出すなど、ジャニー喜多川の最近の発言からは、2020年東京オリンピック・パラリンピックへの強い思いが伝わってくる。

 1964年の東京オリンピックは、日本が高度経済成長を迎えたなかで開催された。ジャニーズ事務所が生まれたのもその頃である。そして時代は昭和から平成へと移り、その平成も終わるなかで2020年を迎える。ただ、高度経済成長をベースに昭和の日本が築いた繁栄や社会も、いまは長引く経済の停滞や少子高齢化などさまざまな問題を抱えている。

 エンターテインメントは時代の反映ではあるが、時には時代を先取りすることもある。「戦後」が遠く感じられるようになりつつある時代のなかで、日本の戦後そのものであるジャニーズはこれからどこへ向かうのか。

 ジャニーズという窓からは日本社会が見える。きらびやかな歌やダンスだけでなく、そんな楽しみ方もできるのがジャニーズなのである。

 KAT―TUNの一時活動休止を経ての再始動、King&Princeという新たなグループのデビューもある。注目して損はない。

▽太田 省一 おおた・しょういち 1960年生まれ。社会学者。アイドル、お笑いなどについて執筆活動を行う。著書に「テレビとジャニーズ」(blueprint)、「マツコの何が“デラックス”か?」(朝日新聞出版)、「SMAPと平成ニッポン」(光文社新書)、「中居正広という生き方」(青弓社)など。

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